公安調査庁・内外情勢の回顧と展望(平成19年1月)に見るオウム真理教


●内外情勢の回顧と展望(平成19年1月) 1.オウム真理教


この報告に記載されているかどうかが、自論を固める際に引用される場合がある。この資料の確からしさについて、私はコメントする材料を持たないが、仮にこの資料をとりあえずの「事実」として認定するのであれば、部分だけではなく、全体的な情報の「確かさ」についても認定しなければ、片手落ちになるだろう。つまり記載されていない情報が、「偽」の証明になるのであれば、記載されている情報は「真」と言ってよいのか。そのへんはどうなのかと。そういう問題である。


少し引いておく。(太字はBigBangが付与)


なお、引用の目的は先にあげたように、公安調査庁の見解をバイブルにする「のであれば」、その見解を総合的にバイブルにするのでければ不適切ではないかという問題提起にある。(もちろん、部分的に正しいが部分的に正しくないという解釈も存在することは認めるが)この資料を引用して、いたずらに、オウムへの警戒心を煽ることが、この目的ではない。既に読み込まれた方があれば、読み飛ばして欲しい。その程度のものである。


注目すべきは、末尾に付した、上祐派への公安調査庁の見解であると思う。


●観察処分延長の経緯

公安審査委員会が観察処分の期間更新(第2回目)を決定〉
教団に対する観察処分の経過など  松本・地下鉄両サリン事件などの凶悪事件を引き起こしたオウム真理教(教団)は,麻原逮捕後も,なお麻原及び麻原の説く教義を絶対視し,その影響下にあるなど危険性を保持していたことから,公安審査委員会(公安審)は,平成12年1月,「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」(団体規制法)に基づき,同教団を公安調査庁長官の観察に付する処分を決定し,平成15年1月には同処分の期間が更新(第1回目)された。この間,公安調査庁は,教団施設への立入検査などの観察処分を実施してきたが,平成16年1月以降も,教団の体質に変化はなく,麻原の危険な説法を収載した教材を相次いで発行して,これを信徒に教学させ,麻原に対する帰依を強調するなど,依然として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が認められたため,平成17年11月,同処分の第2回目の期間更新を請求した。公安審は,公安調査庁の調査結果のとおり,麻原の影響力について「前回の期間更新決定当時に比べ,麻原及び麻原の説く教義への傾斜が強まっている」旨認定した上で,「教団には現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認められる」,「一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築し,欺まん的な組織体質がいまだ改善されたとは言い難い」旨指摘して,1月23日,観察処分期間を3年間更新(平成21年1月31日満了)したのに加え,教団構成員が違法行為を行うなどして多額の収益を上げ,重要な資金源としていることが明らかになったことなどを受け,公安調査庁の請求どおり,新たに,教団の収益事業の概要,各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所などを報告事項として追加する決定も行った。


●教団の実態


教団は,日本国内に約1,650人(出家信徒約650人,在家信徒約 1,000人),ロシア連邦内に約300人(出家信徒約50人,在家信徒約250人)の信徒を擁しているが,日本国内の信徒のうち,出家信徒の約9割,在家信徒の約7割が地下鉄サリン事件以前に入信しており,依然として麻原の強い影響下にある信徒が多数を占める状態にある。また,教団は,麻原及び麻原の説く教義を絶対視し,事件前の組織構造・修行体系を維持している上,今なおサリン事件を正当化する信徒が存在するなど,依然危険な体質を保持している。さらに,教団は,全国の主要都市において,教団名を秘匿したヨーガ教室や占星術鑑定などを行っており,地域情報紙に広告を掲載したり,公共施設を会場に利用するなどして,巧妙な信徒勧誘を続けている。
 教団は,11月末現在,16都道府県下に29か所の拠点施設を確保している。教団は,地域住民に対して不誠実な対応を繰り返すなど,住民との対立が深刻化する中で,教団施設であることを秘匿して契約した施設において,家主側から退去を求められたり,契約期間満了に伴う更新手続を拒否されるなどして退去するケースが相次いだが,中古マンションを購入するなどの方策を講じて,施設維持を図った。
 なお,教団は,年3回の集中セミナー(年末年始,5月連休,夏季)において,高額なイニシエーションを伝授するなどして,合計1億2,000万円以上の資金を獲得した。しかし,立入検査の際に非協力的な姿勢を示すなど,その隠ぺい体質も相まって教団財政の全容は,依然として不透明である。


●麻原奪回の動き

麻原の死刑判決確定を受け,教団は,共犯者の刑事裁判がいまだ係属していることや再審請求の可能性を理由に,麻原に対する死刑執行が相当先となる見込みであるとの認識と期待を示した上で,信徒に対し,麻原の生存・延命を願いつつ,同人への帰依を徹底するよう指導する一方,違法行為などを行わないよう求める役員会名の文書を発出した。
 教団内には,控訴棄却決定を受けて,麻原が死刑になる前に奪還するなどの言動がみられる上,死刑判決確定後も,同死刑判決が覆るとの奇跡を期待する信徒の存在や同人の死刑執行の際の後追い自殺をほのめかす信徒の存在が確認された。また,麻原を神格化し,麻原の死後も麻原への帰依を保持し続けるとする信徒や,「尊師の血を引き継ぐ麻原家の子を中心に立て直していくしかない」などと麻原の家族への期待を表明する幹部信徒も存在するなど,依然として麻原に対する絶対的な帰依が認められ,教団の危険な本質に何らの変化もない。
 死刑判決の確定に伴い麻原の死刑執行が現実的となる中,麻原を盲信するこれら信徒による麻原奪還などの不法事案のじゃっ起も懸念される。


●上祐派離脱への動き

ここは少し長く引用する。

〈上祐派は麻原の死刑判決確定前の“新団体”設立に至らず〉
“聖地”で説法する上祐  上祐派は,“新団体”設立に向け,独自性をアピールするため,夏季集中セミナー(8月12〜15日)において,上祐が選定した神社や仏閣などを“聖地”と位置付け,これを巡礼しながら修行を行った。以降,上祐派は,全国各地の“聖地”で修行を行うことを「巡礼ツアー」などと称し,定例化するとともに,表向き仏教やヨーガの法則を解説した上祐の説法を教材にしようとするなど,“新団体”設立に向けた取組を進めた。
 しかし,こうした“麻原隠し”路線に対し,上祐派内においても,不安を抱く信徒が少なくない上,一般企業に勤務して収入を得ている出家信徒が少なく,財政基盤に不安を抱えていることなどから,麻原の死刑判決確定前の“新団体”設立には至らなかった。上祐派は,引き続き,“新団体”設立を目指しているものの,その名称や教義など確定していない要素も多く,“新団体”設立は先行き不透明な状況にある。

〈反上祐派は中堅幹部のグループが麻原への絶対的帰依を強調〉
 反上祐派では,2月ころ,上祐批判の中心だった村岡が上祐に歩み寄る姿勢をみせたことから,これに反発した師クラスの中堅幹部のグループが,上祐派との共存を図ろうとしているとして,二ノ宮を除く村岡ら正悟師の姿勢を強く批判した。同グループは,各集中セミナー(5月連休,夏季)や勉強会などにおいて,麻原をキリストになぞらえるなど麻原への絶対的帰依を強調する指導を行ったほか,“新団体”設立を表明した上祐に対して「宗教団体アーレフ」の代表辞任を要求するなど,上祐派との対決姿勢を強めた。


報告は、このように上祐派の分離傾向について述べた後、上祐派は「麻原隠し」であると切って捨てている。麻原への帰依に関して、「反上祐派」との間に何ら根源的な差異がないどころか、両派の間に「協力関係」があるとして、その証拠を、教団施設の飲食物の購入関係にも見ることが出来る、と指摘している。


●上祐派は「麻原隠し」

〈両派とも,麻原を崇拝する姿勢に変化なし〉
 上祐派は,“新団体”設立構想として,麻原からの脱却を強調しているが,前述の「巡礼ツアー」などの取組は麻原の従来の手法や説法を模倣したものにすぎない。また,同構想表明以降に実施した上祐派施設に対する立入検査においても,従前同様,教団特有の祭壇を設置し,麻原の著書などを多数保管していることなど反上祐派施設と変わらぬ実態が確認された。さらに,上祐派が,麻原が唱えるマントラ(呪文)を流し続けている室内に一定期間保管した「お供物」と称する飲食物を反上祐派から購入して摂取しているなど,両派の協力関係も一部維持されており,反上祐派はもとより,上祐派も,依然として麻原及び麻原の説く教義を絶対視していることに変わりはない