玉葱の夢を見た。
月の夜半。
どこかの薄暗い台所で、君が懸命に大きな玉葱を剥いている夢だ。
剥いても、剥いても、終わらない。
剥いても、剥いても、中身が出てこない。
いつか中身が出てくるのか。
永遠に出てこないのか。
君の手の中で玉葱だけは確実に小さくなっていく。
そのうち、一体全体、君が玉葱を何のために剥いているのかもわからなくなってくる。
それならいっそ、やめたらどうか、とも思うが、君の形相に押されて、
俄かにはその言葉も口から出てこない。
まあ、俺も臆病なのだろうが、おそらくその玉葱を剥く時に、笑顔は必要ないと思う。