半月

ビデオを返しにレンタルショップへ行ってきた。東京ほど夜中に人がこれだけ蠢いている街は、珍しいだろうな。
2時近いというのに、レンタルショップと併設のブックストアにも、沢山の若者がいた。
みな黙って、本を手に取っている。


下北沢で2年ほど暮らした話は前に書いたけれど、やはり夜中に1人で意味もなく出かけて、コンビニを覗き、ラーメンを食べ、
駅の線路際の汚いビルの2Fにある、大音量でグラムロックがかかっている店で、ズブロッカを飲んでいた。

小説にあるような話は、ほとんど何一つ起きなかったし、下北沢にいる間に劇団に目覚めるとかそういうこともなかった。
孤独で、しかし透明な時間だった。


つまり何もなかったということだ。



なぜあのころを思い出したのかわからない。


車を止めて、しばらく月を見ていた。