お月様が出ますとね
今夜は、十六夜と言うのでしょうか。満ちたる月をほんの僅か過ぎたところでございます。
このような夜更に帰ってまいりますと、いささかやきが回って参りまして、己が命、人が命。
いささかのものかと思えて参りますから、いや、いや。
月夜はつくづく危険でございます。
このような月夜に、生きとし、生ける全ての者を考えますれば、
宗教のこと。病のこと。意地のこと。
愛情のこと。倫理のこと。
過ちのこと。心のこと。
全てが。
全てがどうでもいいように思えて参ります。
月とは、何と厄介なものでありましょう。
一筋。夜空に架かれば、架かったで。
一筋。夜空からかき消えたら、かき消えたで。
心の平穏をかき乱すのでございます。
では今夜も、寝苦しい夜ではございますが
どなた様も良い夢をごらんになりますよう。
おやすみなさいませ。
たわ言でございます。