重大な見落とし---横田めぐみさんの遺骨を巡って

本サイトのほうで、金英男氏の会見について書いた後で、時折拝見している「5号館のつぶやき」さんのここを読んで、横田めぐみさんの遺骨に関わる大変な記事が、なんと2005年の5月14日にアップされていたことを知った。非常に複雑な気分であるが、「5号館のつぶやき」さんが言われるとおり、科学は科学としての良識に忠実であるべきだろう。当該記事はここ数日になってなぜかはてぶが急速に着き始め、大きな話題になっている。金英男さんの会見がきっかけであると思われる。

※「昨年の5月」であることが欠けていましたので、補足しました。(7/3)

 
政治に翻弄される科学者 (横田めぐみさん遺骨事件) 5号館のつぶやき

"There is no standardization." 標準的手法なんてない。

 標準的方法がないうちは、本当の科学とは言えません。彼は彼が使った方法を提示して、誰でもが同じ結果を出せることを保証しなければ、彼の結果は「科学的に証明された」ことにはならないというのが、普通の考え方です。

 同じインタビューの中で、吉井さん自身が1200℃で焼いた骨にDNAが残っているのは、自分でもびっくりした、と書かれています。しかも、吉井さんは過去に火葬した骨からのDNA抽出の経験がなかったので、これが結論だとは言えず、いわば硬いスポンジとも言える状態の焼かれた遺骨を素手でさわった誰か他の人のDNAを調べてしまった可能性はあると告白しています。

 吉井さんはその時点でサンプルを使い果たしてしまっていて、再実験はできないとのことです。再実験ができない以上、彼の結果を肯定することも否定することもできず、これも科学としては非常にまずい状況だと言えます。


(中略)


そうこうしているうちに、とんでもないことが起こってしまいました。うかつにも私はこのニュースを見逃していました。とても悔やまれます。(マスコミのせいにしても仕方がないのですが、少なくとも大々的には報道されなかったのではないでしょうか。)
 なんと、渦中の吉井さんが「横田さんDNA鑑定で実績」ということで「帝京大の講師から、科学捜査研究所(科捜研)の法医科長」に採用されることになってしまいました。「警察が外部の人材を管理職として招聘(しょうへい)するのは極めて異例」だそうです。
 誰が考えても「えーっ」というこの人事は、3月30日国会でも取り上げられています。 第162回国会 外務委員会会議録 第4号(平成17年3月30日(水曜日))に詳しく載っています。


要するに、横田めぐみさんの遺骨にDNAが残っているかどうかについて、ただでさえ異論があるところに、その遺骨別人説を出した、当の帝京大学の吉井教授の実験結果が揺らいでいることと、しかもその吉井さんを、警視庁の職員に転職させてしまったために、正確な証言すら引き出すことができなくなってしまったという、衝撃的な内容である。「5号館のつぶやき」さんが言われるとおり、この件に関する詳しい記事を見た記憶がない。



極めて残念な結果であるが、この件が対北朝鮮交渉に影響するとすれば、まさに「人災」である。
政策的な観点から自粛を重ねたとすれば、当局の姿勢のみならず、報道の姿勢も問われる部分があるのではないか。


先が非常に憂慮される情報である。