帰ってきた鬼束ちひろのこと

everyhome

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鬼束ちひろという人は、何だかいろんなものを背負ってしまっている人だなあと思ってきた。その「いろいろなもの」とは、恋愛だとか、個人的なことというよりは、もっと何と言うのか、巧く言えないのだけれど、自分に起因しない罪的なことというか、概念的なところ。それがなぜ彼女のところに降りているのかがわからない、とでもいうのだろうか。

で、長く音楽シーンから消えていた彼女が帰ってきた。6月1日の「僕らの音楽」は、復帰シングルの「everyhome」をプロデュースした小林武史との対談。小林武史が、大切に大切に話しているのがわかったが、少し腫れものに触るようにしている印象も受けた。
印象は、まず、ずいぶんと痩せてしまったなあというところ。ナーバスな中にも彼女は少し、ふっくらとした輪郭と、丸みのある声が、時に鋭角な歌詞を中和していたように思うのだけれど、帰ってきた彼女は、歌詞の鋭角を、空白の時間の間にそのまま身に纏って帰ってきたような印象を受けた。

声も、本人も言うようにブランクは隠せない。伸びのある柔らかい声が、少し失われて硬くなっているように思えたが、内面的な硬さも出ているのかもしれない。

ファンとしては、帰ってきてくれるのはうれしいけれど、心を含めて、あちこちの傷や骨折がまだ治っていないのに、振り切って戻ってきたような感じがして、もう少し休んでいても良かったのではないかとも思い、正直なところ痛々しい気がした。小林武史も同じ思いだったのではないだろうか・・。

「everyhome」は小林武史も称賛したとおり、復帰にふさわしい「隙のない」曲だけれど、どこか「息苦しい隙のなさ」も感じたのだが。


どうだろうか。