ある夜の日記


湯気の出る場所で会ったゴスロリの彼女が誘ってくれたイベントには寝てしまって行けなかった。言い訳をしようと思って覗きに言ったら、言語不明の人たちしかいなかったので、しかたなく例のカフェへ。カウンターの向こうで、小学生になってしまった、I子ちゃんがずっと納豆をかき回している。

そばに来ないでくんないかな。納豆を持ったまま。
だいたい何十分かきまわしてんだよ、水になっちゃうよ。

などと言っていたら、カウンターの向こうにいたH子ちゃんが突然変身して、身の丈280cmのキカイダーみたいなのになって、抱きついてきた。キスの練習?そんなもの、俺でするなよ。そのザリガニみたいな手と、高すぎる身長を何とかしてくれ。どうせキスするなら、もっと柔らかい感じの好みのアバターで・・と言いかけたらセクハラだと言う。

セクハラはそっちだろ、いい加減に放してくれと言ったらようやく身長が元に戻ったが、手はザリガニのまんまだ。やれやれ。


そろそろ帰るよと言いながら次の店へ。今度は島だ、アイランドだ。こっちのほうが静かでいい。客も少ない。

と思ったら、なんでゾウがいるんだよ。ゾウの背中に乗ってみないか? うむ、これは悪くない。おもしれえ。とカップルの間に割り込む。いい眺めだと悦にいっていたら、ゾウがライオンに変わった。おまけに四足で走り回ったあと、カウンターに座ってビールを飲み始めた。

ああ、あの時のライオンか、お久しぶりって、なんだこの挨拶。

人間には戻らないんですか?などと、くだくだしゃべっていたらもう4時だ。今度こそ帰ろう。

帰ってきても、自分の部屋にはまだソファしかない。ベッドを探しているんだけれど、スクリプト付のダブルベッドしか売っていないんだよなあって何、それ?

つまりさ、ただのシングルベッドなんか買うやつはこの世界にはいないってことだよ。男女用のスクリプトが必ずついていて、それで・・聞きたくない?すみません。

そもそも何でベッドなんか必要なのよ?って、ずっとソファじゃ疲れるじゃん。たまには横になりたいだろ。

こうして夜は更け、今日も彼は孤独に明け方の空を、部屋でソファに横になって眺めているのでした。ああ、ベッドどうしよう。


おしまい。